北はコウノトリの
(聞き手は本多宏・科学部長)

――就任以来、特に「異分野の融合」を重視されてきましたね。
統合の相乗効果と総合大学の特徴を生かすため、大学の基本目標にも掲げています。これからの人類社会に貢献するには、文系・理系を問わず、あらゆる分野を融合することが欠かせません。独創的で新しい知識や人材をつくりだすための必須要件だと思います。
――「融合」は学内に浸透してきましたか。
環境人間学部と自然・環境科学研究所が共同で宇宙環境をテーマにした講義を開講するなど、新たな試みが次々と生まれています。
――ほかにも統合の効果はありますか。
コウノトリの野生復帰など県の事業などとの連携で新たな知的資源が加わったことです。研究所の教員らが付属中高での授業を担当する交流も進んでいます。今春開設する国内初の専門職大学院「緑環境景観マネジメント研究科」は、県立淡路景観園芸学校の専門課程を発展させることで実現しました。
――キャンパスや研究施設が11か所に分散していることで、デメリットもあると思いますが。
学生の部活動など様々な不便はあります。しかし、現状を積極的に生かし、例えば、点在する各部局に学外からの相談窓口を設ければ、各地域ごとに社会とより密接な関係を築くことにつながります。
――県立大としての新しい研究が活発です。
文部科学省のグローバルCOEプログラムに採択された「ピコバイオロジー・原子レベルの生命科学」は、生命理学研究科が近接する大型放射光施設「スプリング8」と大学独自のたんぱく質分析装置を使い、優れた研究成果を上げてきたことが評価されました。神戸・ポートアイランドに建設予定の次世代スーパーコンピューターを使い、シミュレーション科学などに取り組む先端計算科学研究科の構想も進んでいます。次世代の基幹技術を研究できる環境に、これほど恵まれた地域は日本ではほかにないですね。
――大学の将来像をどう考えていますか。
卒業生が一つの大学としての同窓意識を持てるようにしたいと思います。例えば、現在二つのキャンパスで行っている1年生の「全学共通科目」の授業を、1か所で実施するための検討も必要です。新しい学風はすぐには見えないでしょうが、統合して良かったといえるようになりますよ。
――法人化する公立大学も増えてきました。
法人化によって大学運営が強化されるものの、「教育や研究の活性化につながらない」という指摘もあります。他大学の状況や制度の長短を見極めながら検討していく方針です。
――大学にも成果主義が広がっています。
論文や特許の数、外部資金の獲得額だけで機械的な評価をすれば、人文系や若手の研究者は研究に打ち込めません。多様な研究が認められなければ、日本の将来はありません。開学時から学長裁量経費を活用し、まだ目立った成果がなくても将来有望な研究を年間約90件支援しています。全学規模の成果発表会を開き、異なる分野の最新の情報を共有して研究の融合を促すことにも努めています。
――社会貢献については。
大学しかなし得ない貢献を行うためには、まず優れた研究を行うことが基本です。そして、その成果を教育や社会貢献につなげることに全力を尽くさなければなりません。
――学長のリーダーシップとは。
大学は命令だけに従って動く性格の組織ではありません。学長としての基本方針を決めた後は、部局長や担当者らに任せるよう心がけています。信じるところを率直に語り、お互いに理解しながら一体感を持つことが大切です。
くまがい・のぶあき
大阪府出身。大阪大工学部卒。同学部教授、学部長などを経て大阪大学長。大阪府教育委員長、政府の科学技術会議議員などを歴任し、2004年から現職。専門は電子通信工学。79歳。
難事業にも涼しい顔
3大学の統合はさぞや“難事業”だっただろうと想像するが、「大変でしょうとよく言われるが、みんな協力的。苦労は全くない」と涼しい顔。阪大学長の経験なのか、はたまた器量の大きさか。心の奥はうかがい知れない。「県立大になって、どんな大学かわからなくなりましたね」と意地悪質問にも「その通り。商大、姫工大、看護大の歴史が地名とともにわかる命名法を検討中」と即答がきた。青春の一時期を過ごした米国のUCバークレー校を意識しているそうだ。兵庫に〈夢のカリフォルニア〉を実現してください。