
大学4年の時、報道写真家、沢田教一さんの個展を偶然見たのが、この世界に入ったきっかけです。展示されていたのは、ベトナム戦争で幼子を連れて懸命に川を渡ろうとする母親をとらえたピュリツァー賞受賞作「安全への逃避」。1枚の写真が持つ圧倒的な存在感に衝撃を受けました。「自分が進む道はこれだ」と翌日、手動式の一眼レフカメラを買いました。
最初は沢田さんやロバート・キャパのような報道写真家にあこがれましたが、卒業後はスポーツ写真家としてキャリアを積み、自分だけの表現を求めて試行錯誤を重ねました。今は活動拠点を大阪に置き、主に海外で絵画や彫刻など様々な分野の芸術家たちと合同展覧会を開いています。
昨秋、オーストラリアのメルボルンで開かれた現代アートの展覧会に参加しました。この時、現地で撮影した作品を母校の「オーストラリア・ライブラリー」に飾っていただき、うれしい限りです。
大学の4年間は、カメラやクラシックギターなど、自分の好きなことに打ち込みながら、人生や将来の目標をじっくりと考えることができました。なかでも2年生の夏、大学のプログラムで米カリフォルニア州立大ロングビーチ校に短期留学したのは貴重な体験でした。英語に自信がついただけでなく、韓国系米国人と間違われた経験から韓国語にも興味を持つようになり、卒業後は韓国で2年間過ごすなど、世界に活躍の場を探すようになりました。
大学は人生を豊かにする人や物と出会う場。私はカメラと出会ったことで「限られた時間の中でどこまで到達できるか」という目標を持って人生を送れるようになりました。都会の喧噪(けんそう)から離れた閑静なキャンパスで過ごす時間を無駄にすることなく、存分に役立ててほしいと思います。
1973年、大阪市生まれ。2004年、英国で初の個展を開催。05年にはルーマニアでの第1回アラード国際現代芸術ビエンナーレに参加、第148回英国王立写真協会国際写真プリント展で入選を果たすなど、若手芸術写真家として国際的に活躍している。現在、同協会とカナダ写真芸術協会に所属。