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全国知事リレー講座

「歴史・文化を活(い)かした地域づくり」

長崎県・金子原二郎知事

交流人口拡大で活性化

長崎県・金子原二郎知事

 地方交付税の削減、人口減少、公共工事費の減少などは全国共通の問題だが、離島を抱える長崎は特に厳しい。こうした状況に対応するため、職員給与の削減、市町村合併の推進、企業誘致による雇用の確保など対策をとってきた。

 しかし、県全体の浮揚策としては不十分。長崎には他県にない歴史資産が存在し、観光消費額は県の産業の中で大きなウエートを占める。そこで、観光を活性化させ、交流人口を拡大することにより県全体の経済の底上げが可能と考える。従来の「来て、見る」だけの観光ではなく、食を楽しみ、歴史を学び、地域の人たちと交流するなど色々な形のメニューを提供することが必要だ。

誘客のための基盤整備

 交流人口拡大のためには高速交通網などハード整備は必要であり、積極的に取り組まなければならない。特に、西の端に位置する長崎県にとって、新幹線はなくてはならない道具だ。

 九州新幹線長崎(西九州)ルートが開通すれば、福岡都市圏の233万人に加え、中国圏の768万人、関西圏の2089万人が集客対象となり、観光市場が一気に約3000万人に拡大する。同ルートは4月に着工できたが、その効果を県内全体に拡大しなければならない。

 現在、老朽化した県庁舎整備をどうするかを検討しているが、長崎駅近くの埋め立て地に移転し立て替える案がある。新幹線駅から県庁舎へ続くデッキを設け、五島行きのジェットフォイル(高速船)と連絡させることで、五島の振興も見込める。また、外国籍旅客船の帰港実績は日本一であり、新幹線と長崎港を結びつけることで、世界へと交流の輪が広がり、国際観光都市として再生させることができる。

 観光客に喜ばれ、文化を楽しむ拠点づくりも重要。多数のスペイン美術を保有する県美術館を港の景観に合わせ、運河をまたぐ形で整備。開館後は県の人口を上回る160万人以上が訪れた。長崎歴史文化博物館は長崎奉行所立山役所の一部を復元し、ボランティアが当時の裁判の様子など再現し、人気を博している。

長崎のファンを増やす

 昨年1月、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が世界遺産暫定リスト入りした。世界遺産に登録されれば、世界ブランドとして外国からの観光客を呼び込むことができる。経済波及効果は1年で約93億円と試算され、所在地も五島、平戸、佐世保など県内一円に分布しており、経済効果は広範囲に及ぶ。教会を旅する中で癒やしや安らぎが得られるよう、魅力ある旅行企画作りに取り組んでいる。

 今年9月には長崎県の端島炭坑(通称・軍艦島)や旧グラバー住宅などが含まれる「九州・山口の近代化産業遺産群」も世界遺産暫定リストに追加された。このことは長崎の文化の多様性や、歴史の奥深さを物語っている。一日も早い世界遺産登録を目指し、全力を尽くす。

 交流人口拡大のためにはインフラの整備だけでなく、ソフトの充実も必要だ。歴史ガイドブック「旅する長崎学」を発行したり、「旅する長崎学講座」を首都圏や京都など各地で開くなど長崎の歴史文化を県内外に発信したりして、長崎ファンの拡大に努めたい。

中国を経済の相手に

 長崎県内の観光消費額もここ数年回復の兆しが見えてきたが、観光は長崎の柱であり、もっと頑張らないといけない。長崎と地理的にも近く、1億人の富裕層がいると言われている中国を視野に入れた観光戦略を組み立てて行かなくてはならない。

 中国を経済の相手として、長崎の物産を中国に売り込むため、10月に中国・北京市の北京新光天地百貨店で「日本長崎フェア」を開催し、期間中、3万5000人以上の人が来場した。中国の富裕層は、中国国内にない質が高い商品を求めているとがわかり、物産の販路として日本国内だけでなく、北京、上海、ソウルなどアジアの主要都市を販路として考える必要があると実感した。

 私が県政の推進で心がけていることは現場主義。現場に出かけ、地域の皆さんと意見を交換し、県政に反映できるよう努力している。みなさんも肌で感じたことを、大学で学んだ知識により、形のある企画に創りあげる習慣を身につけてほしい。

2008年11月08日  読売新聞)
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