主権回復ドラマチックに
白洲(轟、左)とマッカーサー(大和)は戦後日本の復興に向けて意見を戦わせる=(c)宝塚歌劇団
久しぶりにスリリングな宝塚歌劇を堪能した。
宙組のミュージカル「黎明(れいめい)の風」(石田昌也作・演出)は、昭和戦争前後を背景に、日本の復興に尽くした白洲次郎とマッカーサーのドラマ。およそ「宝塚らしくない」時代を扱う、思い切った試みだ。
白洲役は専科の轟悠(とどろきゆう)、マッカーサー役には宙組トップスターの大和(やまと)悠河(ゆうが)。
日本が連合国に降伏した報とともに白洲が登場する冒頭の場面が強烈。日の丸、そして「葬式無用 戒名不要」との自身の遺言書の文言を墨字で記した垂れ幕に、白洲のシルエットが映る。日本の未来に身をささげる覚悟を象徴するよう。
戦前、英国に留学した白洲は、帰国後も商社マンとして海外に通じていた。政治の中枢から距離を置いた立場で首相の吉田茂(汝鳥伶(なとりれい))を支え、日本の主権回復に向けてマッカーサーと意見を戦わせ、理解し合っていく過程がドラマチックだ。
天皇制や、新しい憲法の制定など、デリケートな問題を巡る両者の論議も気後れせずにセリフが書き込まれ、迫力があった。
そこで展開する歴史観に違和感を持つ向きもあるだろうが、これぐらい突っ込んだやり取りをする方が、現実味が増す。
白洲は西洋仕込みの物腰で連合国軍総司令部(GHQ)に理解を示しつつ、ここぞという時に「内政干渉だ」と啖呵(たんか)を切る。轟は「柔」と「剛」を鮮やかに使い分ける、ベテランらしい男役の芝居で魅了した。
大和のマッカーサーも健闘。終盤、朝鮮戦争への参戦を決意するが、白洲の土下座に思いとどまる。そこへ本国からGHQ解任の指令が届き、「ようやく帰国できる」とほっとした表情に。実際の彼もそんな心境だったのではないかと、ふと、想像させる印象的な演出だった。
世界で戦争が絶えない今、夢を描いてきた宝塚歌劇にとっても、平和が最高の夢なのかもしれない。
(満田育子)
――17日まで、宝塚大劇場。
(2008年03月06日 読売新聞)