西野ガンバ、個性生かすチームに
早大時代に保健体育の教員免許を取得した。29歳のころ、その免許を使おうと思った。天才肌のMFとして大学時代から日本代表に選ばれた西野監督は、卒業後に進んだ日立製作所では持ち味を出し切れずに悩んでいた。「自分のプレースタイルを見失っていた」と引退も考えた。
ドリブル突破や両サイドにパスを展開して前線に飛び出すプレーを得意としていた。しかし、日立は「パス・アンド・ゴー」の走るサッカー。「速さを求められ、特長が消えた」。埼玉・浦和西高時代の監督、仲西駿策さん(73)にも相談したが、「まだ来るな。日立に恩返ししろ」と説得された。34歳までの現役生活は、苦悩が多かった。
染みついたプレースタイルの変更は、「歩き方を変えるのと同じぐらい難しい」と言う。8月末に加入したドリブラーのペドロジュニオールの悩みも、これに近い。今季新潟で10得点したが、移籍後は30節までのリーグ戦4試合で1得点。パスサッカーになじもうと苦しむブラジル人FWに、西野監督は「おまえの良さを出せばいい」と声をかける。
個性を生かし切る。それこそが強いチームを作る根幹と信じる。「型にはまったチームは面白くないし、役割を限定された中では、いい発想、いいプレーは生まれない」。主力として、監督と8年目のつきあいになる遠藤は、そんな西野流を体現する筆頭格だ。
試合中、遠藤はポジショニングをよく変える。「自分からポジション変更を申し出る時もあれば、勝手に変える時もある。そこは流れ。監督も意見を聞いてくれる」。監督の指示で前方に位置を変える時も、「もう少し前へ」という言葉だけで、遠藤が役割を解釈。「生き物」のように流れを変える展開に合わせて、試合を操る。その選択を、西野監督も信頼する。
「遠藤にしても二川にしても、常道ではない、違うことをしたいという感覚は自分と似ている」。選手時代に出来なかった理想のサッカー。今、ガンバでそのイメージを体現できる選手たちを得て、西野サッカーは逆転優勝への道程を進もうとしている。
(山口博康)
(2009年10月27日 読売新聞)