ニュース 速報 YOMIURI ONLINE(読売新聞)
現在位置は
です

本文です
ニュース/スポーツ

聴覚障害者、部活動で自信 わか杉大会に向け猛練習…秋田

聴覚障害で聞き取りにくいピストルの合図に合わせて何度もスタートの練習を繰り返す県立ろう学校の陸上競技部員たち
聴覚障害で聞き取りにくいピストルの合図に合わせて何度もスタートの練習を繰り返す県立ろう学校の陸上競技部員たち

 秋田県立聾(ろう)学校(秋田市土崎港北)の陸上競技部員3人と卓球部員1人が、13〜15日に県内で開かれる全国障害者スポーツ大会「秋田わか杉大会」に出場する。聴覚に障害がある人が通う同校の運動部は、安全に配慮して陸上競技部と卓球部のみ。浜田啓子教頭は「大会への出場経験や部活動を通して得る達成感が、生徒たちの自信につながり、人間的にも大きく成長させる」と活動の成果に期待している。

 同校は県内唯一の聾学校で、幼稚部、小学部、中学部、高等部、高等部専攻科(2年)の課程に分かれ、計45人が学んでいる。

 運動部の活動には中学部以上が参加し、現在は、陸上競技部に8人、卓球部に11人が所属。平日にほぼ毎日練習し、秋田わか杉大会のほか、聾学校対象や一般向けの大会にも積極的に参加している。

 午後3時半過ぎ、陸上競技部の部員たちが授業を終え、次々と校庭に集まってくる。「ダッシュ 30メートル×5、50メートル×3、80メートル×1、スタートダッシュ……」と紙に書かれたメニューから、部員はそれぞれ、自分の体調や目標に合わせて選び、練習に取りかかる。監督を務める葛西亜樹子教諭(保健体育)(34)は「きつい内容でも自分で選んだものであればできる。自主性を重視している」と話す。

 秋田わか杉大会で陸上100メートルと砲丸投げ(砲丸重量4キロ)に出場する高等部3年の小松瑞穂さん(18)は、スタートの練習を繰り返していた。コーチの教諭が鳴らすピストルの合図からワンテンポ遅れて飛び出し、顔をしかめて戻ってきた。小松さんは相手の唇の動きを見ながら手話を交えて会話をする。戻ってきた小松さんは声を発しながら懸命に手を動かした。それを見て、コーチが「(ピストルの音が)聞こえなかった?」と聞くと、小松さんはうなずいた。

 小松さんは重度の聴覚障害があり、補聴器をつけている。聴力に障害がない人には、大きく聞こえるピストルの音も、小松さんにとっては聞き取ることが難しい。風向きや車の音などの雑音で聞こえないことも多いという。それでも「タイミングは練習すれば大丈夫」と信じ、またスタートの位置に着いて何度も練習を繰り返した。

 小松さんは上級生に誘われ、中学部1年から陸上を始め、その年の冬に大仙市の実家から聾学校の寄宿舎に移って勉強と部活に専念。練習が嫌で仕方がない時期もあった。だが、高等部1年の時、全国聾学校陸上競技大会の砲丸投げ(同4キロ)で3位に入った。そのうれしさと達成感が忘れられず、夢中になった。部活を始める前は、何でもやる前にすぐ「無理」と決めつけ消極的だったが、「今は『まずやってみよう』と思えるようになった」と話す。

 秋田わか杉大会には、小松さんのほか、200メートル、砲丸投げに、高等部専攻科2年の高橋正純さん(19)と岡部祐介さん(19)が出場。一般卓球には高等部3年の友利高侑(たかゆき)さん(17)が出場する。大会最終日の15日には、高等部全員で、秋田市の県営陸上競技場に陸上競技部員の応援に向かう。

2007年10月15日  読売新聞)
現在位置は
です