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挑戦

人としての魅力を伝えたい

 今回は、ドキュメンタリービデオの制作活動について今村彩子さんにお話を伺いました。
 彼女は、愛知教育大学在学中に初めて制作した「めっちゃはじけてる!豊ろうっ子〜愛知県立豊橋聾学校の素顔〜」をはじめ、ろう重複障害のデイサービス「つくし」を取り上げた「つくしの現在」、アメリカのダンスグループの公演の舞台裏を撮った「響いて」など、現在制作中のものを含めてこれまでに10本以上の映像を制作しています。
 小学生の頃、映画監督になるのが夢だったという彼女に、その理由や初めて制作したビデオのこと、これからどんな映像を撮っていきたいのか、などについて語ってもらいました。

写真:今村さん

今村彩子(いまむらあやこ)さん

ドキュメンタリービデオ制作をはじめ、ろう・難聴児の学習塾「寺子屋そら」講師、愛知県立豊橋聾学校非常勤講師、アメリカ手話講師として活躍。2歳のとき、先天性感音性高度難聴と診断された。愛知教育大学教育学部特殊教育科在学中、映像制作技術を学ぶためカリフォルニア州立大学ノースリッジ校に1年間留学。名古屋市出身。26歳。


―――ドキュメンタリービデオはいつから制作しているのでしょうか。
 制作を始めたのは2000年9月です。映像技術を学ぶため、1年間カリフォルニア州立ノースリッジ校に留学し、その年の1月に帰国、ビデオカメラを購入して何を撮ろうか考えていたときでした。
 初めて制作したビデオは、社会が想像するろう学校のイメージと、自分が通って知っているろう学校の実情の違いを知ってもらおうと思って撮りました。ろう学校は一般学校と比べて日常生活で触れる機会が少なく、「暗い」「かわいそう」「別世界」といったイメージを持たれがちですから。


今村さん愛用のカメラ
(提供:今村彩子さん)

―――この作品は名古屋テレビ主催のビデオコンテストで優秀賞を受賞していますね。
 「めっちゃはじけてる!豊ろうっ子〜愛知県立豊橋聾学校の素顔〜」というタイトルのビデオで、11月のコンテストに応募するために制作しました。聴者(聞こえる人)のレポーターと一緒にろう学校に行き、子どもたちに話を聞くなどして、ありのままの姿を撮ったものです。年に1回行われるコンテストで、150本ぐらいの応募作品の中から選ばれました。初めての作品だったけれど、自信はありました。小学生のころから自信家なんです(笑)。
 他の人の作品と比べると、字幕が読みづらいなど技術面では下手だったのですが、作品の内容やハートの面で評価してもらえたこと、取材を通してレポーターの気持ちに変化が出ていたのが嬉しかったですね。「聞こえない子どもたちはかわいそうだと心のどこかで思っていたけれど、かわいそうなのは偏見を持っていた自分のほうだった」と話してくれました。

―――ビデオを見た人からはどんな反応が寄せられたのでしょうか。
 小学校や中学校、地元の手話サークルなどから依頼があり、各地で上映されました。「今までのろう学校に対するイメージとは全然違った」「ろう学校の子どもたちも一般学校の子どもたちと変わらないんだ」「ろう学校のことが分かって良かった」という感想が目立ちました。
 過去にいじめを受けたこともあって、私はそれまで聴者に対していい思いがあまりなく、壁を作っていました。しかし、ビデオを作ったことがきっかけで、「聴者は聞こえない人に接する機会がないために、テレビから得る情報だけで思い込んでしまったり、悪気があるのではなく聞こえないことに対する無知から判断してしまったりするのだ」と実感しました。
 その時、映像制作を仕事としてやっていこうと決めました。自分にとって大きな思い入れのある作品です。

―――初めての制作で苦労したことは。
 当時は学生だったのでお金がなく、撮影はホームビデオカメラ。編集ソフトが入っているパソコンも高くて買えず、ろう学校の先生に借りて教えてもらいながら作ったのですが、本当に編集知識も技術も全くないところからビデオコンテストに応募するという目標に向かっていました。制作中はせっかく作ったのに保存したつもりが消えてしまったり、パソコンの処理能力が足りなくて止まってしまったり、分からないことの連続で大変でした。
 撮影を始めたとき、「コンテストに応募する」と公言していたので必死でした。締め切り当日にやっと完成し、ビデオテープを無事郵送し終えたときは、ジェットコースターから降りてホッとしたような気持ちでした。パソコンの使い方を教わったり、ビデオに流す音楽を選んでもらったりと弟や母にも協力してもらいました。


「映像作家をめざす人のためのワークショップ(あいち国際女性映画祭2004)」の様子
(提供:今村彩子さん)

―――ドキュメンタリービデオの制作にあたって心掛けていることは。
 自分で勝手にイメージを作り、ここで泣かせて、ここで笑わせて、という計算が入っているものではなく、その人が生き生きしているところも、がっかりしているところも全てありのままに撮りたいと思っています。
 映像を通じてありのままを見てもらうことで、「ろう者はかわいそう」とか「不便」といった聴者の思い込みをなくしたい。ろう者を前面に出すのではなく、人としての魅力を伝えたいのです。

―――これからの課題は。
 ろう者が手話で話している場面では手話や表情が全て見えるように、という意見が多く、今までは画面の中に入るように気をつけていました。でも、それだと全体を撮るだけになってしまって変化がなく、単調になってしまう。"話しているときの目に力が入っている"というような表情も私は大事にしたいので、顔のアップも入れるようにして、手話で話している部分は字幕をつけて対応していきたいと考えています。
 技術面でのレベルアップや自分らしさを見つけることも課題です。以前、"あいち国際女性映画祭"で行われていた「映像作家をめざす人のためのワークショップ」に参加したとき、友人に「あなたらしさって何?」と聞かれて答えられなかったことがありました。
 作品を見てもらったときに「これとこれは今村が作ったんだな」と分かってもらえるようなものを作りたいし、「今村が作った映像だから見たい」と言ってもらえるようになりたい。「ろう者が作った映像」として見られるのは嫌ですね。今も模索中ですが、作りながら自分らしさを見つけていきたいのです。

2005年05月26日  読売新聞)
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