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よみうり子育て応援団

新メンバーメッセージ

 発足から5年を機に、よみうり子育て応援団をパワーアップしようと、東京大教授の汐見稔幸さん、子ども調査研究所所長の高山英男さん、童話作家の肥田美代子さんの3人にメンバーに加わってもらった。それぞれの立場から子育てを取り巻く現状や課題、子育て世代へのメッセージを聞いた。

高山 英男さん 75

 ◆地縁、血縁、子ども縁



高山 英男さん
 子ども調査研究所所長。日本玩具文化財団理事。こども環境学会幹事。著書に「20世紀おもちゃ博物館」(共著)など。

 長年、子どもたちへのインタビューを通して、子どもの世界を探り続けている。

 「最近の子は『欲しいものは?』と聞いても、即答しない場合が多くあります。いつもおねだりして買ってもらっていたり、ほしいと訴える前に親や祖父母が先回りして買い与えたりしているので、夢に見るほど欲しいものがない。思いがかなうという感動の機会が失われているのは、豊かさの中の不幸だと思います」

 子どもが犠牲になる事件・事故が増えるなか、屋外を駆け回る子どもの姿が減っているのが気がかりだ。

 「子どもは本来、友達との遊びの中で、人とのつきあい方、対立や連携などの関係を培います。中でも、欠かせないのが外遊び。なのに、親が常に付き添ってなければ不安という状況は、子どもには退屈だし、親は疲れます。特に専業主婦のお母さんの疲労感が目立ちます。昔は、子どもが外で遊ぶ間に家事ができたのに、今は公園まで見守りに行かないといけませんから」

 解決策として、地域コミュニティーの活性化を挙げる。

 「子ども時代、下校途中によく、イチゴ畑で盗み食いをしました。逃げ足の遅い子が畑のおじさんに見つかり、怒られることもありましたが、別の日に釣りに行った先でそのおじさんに会うと、釣りを教えてくれたり、『悪ガキだけど釣りは見込みがある』とほめてくれたりしました。かつてはそんな“近所のおじさん”がどこにでもいました

 どうすればよいのか。

 「まず、家族でのレジャーに、子どもの友達を連れて出かけてはどうでしょう。子どもは友達と過ごせるし、親も交代で大人の時間を楽しめます。地縁、血縁だけでなく、子どもを介した『子ども縁』を発達させたいですね」

 子育てに関する情報に翻弄(ほんろう)され、迷いや心配を募らせている親もいる。

 「過剰な育児情報のはんらんが、新たな育児不安を生んでいます。『よそはあんなに頑張っているのに、うちはこんなにのんびりしていていいのか』と思ってしまうのです。10人の子がいれば、才能や個性は10人とも違う。違いを無視して、一律の物差しで育児を語ることはできません。子育て応援団は、参加者の多くが抱えている悩みや不安を『そうなんだよね』と共有、共感し、専門家との交流ができる場。お父さん、お母さんが安心して、元気を取り戻していただけるよう、協力できればと思っています」

(聞き手・長谷川敏子)
肥田 美代子さん 65

 ◆広がれ「絵本の広場」



肥田 美代子さん
 童話作家、出版文化産業振興財団理事長。衆議院議員時代、「文字・活字文化振興法」の制定に尽力。著書に「ゆずちゃん」など。

 国連で「子どもの権利条約」が採択された1989年に、国会議員になった。翌年、行動目標を定める「子どものための世界サミット」も開かれた。

 「70か国余りの首脳らが『子どもを政治の最優先課題に』と誓い合い、大きな期待を寄せました。ところが、日本は条約の批准まで5年もかかりました。関係する省庁が複数にわたり、総合的に子どもの現状をとらえる役所がなかった。私は〈子ども省〉の創設を訴えました」

 2005年には、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数の平均)が1・25と、過去最低を更新し、関係機関に大きなショックを与えた。

 「少子化は、今の日本に『生まれたくない』と言う子ども自身の反乱だと思います。高齢者70%に対して、子どもはわずか3・8%という国の予算配分を見直し、トップが政治の最優先課題とする強いメッセージを発しなければなりません」

 童話作家の経験を生かし、議員を務めた15年間で、国際子ども図書館の設立や「子どもの読書活動推進法」の制定などに力を注いだ。「子育ての真ん中に絵本を」と呼びかける。

 「子育て支援センターなどが各地に開設されていますが、お母さんたちに、ただ来てくれ、と言っても足を運びにくい。絵本は、親と子、親と親をつなぐツールです。図書館に本はあっても、幼い子どもが自由に楽しめるムードではありません。本をかんでも引っ張ってもよく、大声で騒いでもいい環境が必要です。そして、相談にのったり、本の読み語りをしたりする地域の大人がいる。そんな〈絵本の広場〉がたくさんほしい」

 絵本の読み語りのイベントなどで、親の質問に答えるうちに、子育てや家族関係の悩みに行き着くことがある。

 「子育ては素晴らしいけれど、それだけに追われる人生でいいのか、という焦りがあるんです。私もそうでした。3人の子育て中、何かを始めたくて、童話創作の教室に通ったのが、作家になったきっかけでした。私は同居していた親に随分助けられました。そんな親がおらず、一人で悩むお母さんに『大丈夫』と背中をたたいてあげるのが、応援団の役割かもしれません」

 春から理事長を務める財団も参画して「文字活字文化推進機構」を来年立ち上げ、全国的な読書運動を始める。

 「育児に悩む親が、絵本を何冊か読むうちに、吹っ切れて、いい顔をする瞬間があります。各地の取り組みを一つにつなぎ、大きな動きにしたい」

(聞き手・島香奈恵)
汐見 稔幸さん 59

 ◆家庭で現代風“放牧”



汐見 稔幸さん
 東京大大学院教育学研究科教授(教育学、教育人間学)。3人の子育てを経験。全員保育所育ち。父親の育児参加を呼びかけている。

 止まらない少子化。増える児童虐待。子育てが難しく負担感の強い営みになっている。その背景には子育て環境の大きな変化があるという。

 「以前の子育てでは、親が幼い子を朝から晩までずっとそばにいて世話をするということはなかったのです。母親も家事や野良仕事など長時間の労働があり、子どもは家の外で共同体的な隣近所や親類が面倒を見ていました。そこには路地、河原など子どもの遊べる環境がたくさんあり群れることで社会性を身につけた。いわば地域社会に“放牧”していたわけです。一方、“厩舎(きゅうしゃ)”である家の中では仕事を手伝うことで家庭文化の担い手になった」

 その基本が初めて成り立たなくなってきているのが今の時代だ。

 「モータリゼーションの発達で子どもの遊び場がなくなり群れることができなくなりました。家庭でも手伝う仕事がなくなった。親は放牧させることができなくなり、そこで身につけることができた社会性を家庭の中で親が育てなければならなくなった。外部委託していた子育てが内部化されたとも言えます」

 その中で子どもがうまく育つかどうかは親次第という傾向が強まっている。

 「家庭で絆(きずな)を深めたり子育てしたりすることは、意識的にしなければならなくなりました。それを上手にやる力“ファミリーリテラシー(家族経営の基礎能力)”が問われるようになっています」

 家庭での比重が高まった子育て。母親一人ではとうてい担いきれない。

 「(いるのであれば)父親は育児の手伝いというレベルではなく、担い手として登場しなければなりません。そこで“現代風の放牧”環境を作らなければならないのです。キャンプなど家庭内に意識的に不便を作り仕事にすることが必要になってきます」

 意識的に現代の放牧環境を作るには一つ一つの家庭の努力では限界がある。行政、政治、経済の責任は大きい。

 「父親が育児を担う社会にするには、企業が本気で変わろうとしなければ何をやっても絵に描いたもちに終わってしまうでしょう。ヨーロッパでは30年ほど前から父親を早い時間に家に帰すことに取り組みました。夕方、明るいうちから父親が家にいるように。平日の夕方、スーパーで父親がベビーカーを押す姿が普通に見られるようにならないと、少子化は止まらない。目先の対策だけでは変わらないのです」

(聞き手・森川明義)
参加者の声

 「子どもを保育所に預けることは決してかわいそうなことではない。外の意見は気にしすぎず頼りたいとき頼れる方法を作っておこうと思いました」(大阪、30代の会社員)

 「今、育児休業中です。復帰するか、するとしたらいつか、あるいは退職するか、と悩んでいましたが、もう一度考え直すいい機会になりました」(大阪、30代の主婦)

 「現在、2人目を妊娠中。1年間の休職予定ですが、復帰にも前向きになれました」(大阪、30代の会社員)

 「手探りの中で仕事と子育ての両立をしていますが、話を聞いて『今していることに自信を持ってもいいんだ』という励みになりました」(大阪、30代の幼稚園教諭)

 「親の過干渉が子どもの好奇心の芽を摘んでしまうという言葉にはっとさせられました」(松山、30代の主婦)

 「身近な話ばかりが題材で本当にうれしかった。1歳と6歳の息子について考えていることの具体的なアドバイスが得られました」(松山、30代の主婦)

 「私の相談が取り上げられ思わず涙が出ました。でも、皆さんのお話を聞いてすっきりしました」(神戸、30代の主婦)

 「最近、子育てにストレスを感じることがありましたが、同じ悩みを持っているママがいることを知り、明日からまたいっぱい愛情を持って子どもと向き合っていこうと思いました」(岡山、20代の主婦)

 「自分の思っていたことに対し背中を押してもらえた気持ちです。とてもためになるアドバイスをいただけました」(岡山、30代の主婦)

2006年10月02日  読売新聞)
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