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周囲の接し方で混乱軽減「まわりの子どもと、何かが違う」――。そんな子どもの特異性に親や教育者が気づいた結果、「広汎(こうはん)性発達障害」と診断されるケースが増えてきた。人との交流が苦手という、この障害に対する知識が広がってきたからだ。育児や教育の中での訓練で人間関係を円滑にしたり、社会生活に適応することは可能だ。しかし、正確な理解が進んでいるとは言えず、適切に対応できる医療機関も少ない。 (増田弘治)
育て方は無関係「自閉症」「アスペルガー障害」などをまとめて、広汎性発達障害と呼ぶ。自閉症は言語の発達に遅れがあるのに対し、アスペルガー障害では著しい言葉の遅れはない。 こうした障害を持つ子どもたちは、他者の感情をうまく理解できないので、「太ってるね」などと全く悪気なく言ってしまう。言葉を文字通りに受け取ってしまうので、「その話は置いておいて」と言うと、「何をどこに置くの?」と応じる。アナウンサーやアニメのキャラクターをそっくりまねた話し方をしたりするのは、想像力を働かせることが難しく、物事にこだわりを持ちやすいためだ。 こうした特徴から、広汎性発達障害の子どもや家族は「親のしつけが悪いからだ」という誤解にさらされてきた。 実際には、先天的な脳機能の障害が原因と考えられ、育て方とは無縁だ。全人口に占める割合は1〜2%にのぼるとされ、男性に多い。 朝起きて登校するまでにすることの順番を厳密に守るなど、極端な「こだわり」も目立つ。一方で、特定の分野に強い関心を持ち、数学的な思考に優れ、知的水準の高い人も多く、研究者や芸術家として成功することもある。驚異的な記憶力を持つ人もいる。 自閉症のうち、知的障害がない場合を「高機能自閉症」と呼ぶこともあるが、世界保健機関(WHO)や米国精神医学会の診断基準では、その分類は用いられていない。 多い誤診広汎性発達障害は、注意力や行動の制御能力が欠ける「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」、読む・書く・数えるなどのうち特定の能力が著しく劣る「学習障害(LD)」と間違えられることが多い。広汎性発達障害によくある不注意や学習のアンバランスが、一見するとADHDやLDのように見えるからだ。 LDと誤診されると、学習能力を改善する訓練に力点が置かれ、人との交流を円滑にする支援はないままになる。 京都大医学部保健学科教授の十(と)一(いち)元(もと)三(み)さん(児童精神医学)は「専門の医師以外による誤診が頻発している。確定診断までに4〜5か所も相談機関や病院を回り、そのたびに診断名が変わった人もいる」と話す。 他方、専門知識のある医師に患者が集中し、受診まで何年も待つ事態も起きている。「その間に子どもの状態はどんどん変わるし、不適切な教育指導を受けるおそれもある」と十一さんは指摘する。 早期に正確な診断を受けるには、どうすればいいのか。 府県や政令市の精神保健福祉センターや発達障害者支援センター、障害者支援部門は医療機関のリストを作っている。そうした情報をもとに、最寄りの病院や診療所を訪ねることを十一さんは勧める。 医師の診断結果は家族や保育者、教職員らで検討する。そこで疑問が生じ、納得できない場合、その診断は誤りか、不十分な可能性がある。改めて医師と相談するか、別の医師の意見を求めるとよい。 十一さんは「1歳半健診で可能性のある子どもを見つけようという試みもあるが、早期の診断だけでは意味がない。就学前までに気づいてサポート態勢がとれれば、効果は非常に大きい」と言う。 親の理解がカギ大阪府立精神医療センター・松心園の児童精神科医師、大石聡(さとる)さんは「親が障害の特性を知れば、子どもの行動の理由がわかり、互いにずいぶん楽になる」と話す。診断の際は、親への説明に特に時間をさいているという。 「まず、先天的な障害であることを理解してもらい、『自分のせい』という罪悪感を除く。次に、障害の特徴をかみくだいて解説すると、育児で苦労した点が理解できて気持ちが和らぐ。どこに注目すれば周囲との関係を改善してやれるかも見えてくる」 広汎性発達障害の子どもは聴覚や触覚が過敏になるため、知覚に入る情報を遮断しようと、一つの遊びに没頭する。大石さんによると、「自分を落ち着かせるための理にかなった行動」なので、中断させようとしてしかると、パニックに陥ってしまう。理由を理解し、介入しすぎないようにすれば、その子なりの方法で、周囲と交流を持とうとするようになるという。 日本自閉症協会大阪府支部の井上ひとみさんは、広汎性発達障害の子どもを持つ。「一見、自分勝手な子どもの言動には本気で腹が立つもの」という。しかし、そこで怒っても、親の感情が理解できない子どもの混乱は逆に深まる。 「私の場合、障害の特性を教える教室に通い、子どもへの接し方がわかると、腹を立てずにすむことを知った。周囲と交流しやすいよう導く方法も考えることができた」と井上さんは話している。 (2007年8月12日 読売新聞)
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