文楽、正確には文楽人形浄瑠璃芝居は、その芸術性で世界トップクラスの人形劇である。三百年以上の歴史があるだけでも珍しい。
ストーリーは、床(ゆか)の太夫と三味線による浄瑠璃の語りによって展開される。人形は大きく精巧で、カラクリ仕掛けで表情を変え、1体に3人もの遣い手がかかり、人間のように、時には人間以上に喜怒哀楽を表現する。
人形浄瑠璃は古代から長く知られた2つの芸能、大道芸の人形芝居と、音楽にのせた語り物が結びついて生まれた。庶民の文化がようやく花開いた江戸時代初期、当時はハイカラだった三味線の調べにのって、人形浄瑠璃は全国に広がった。
そして、浄瑠璃の竹本義太夫と作者の近松門左衛門という2人の天才の協力で大阪が、いつしか「本場」の地位を確立した。
文学としての戯曲である浄瑠璃本、美術としての背景と舞台装置、音楽としての三味線、太夫の朗唱と語り、そして人形による迫真の演技、それらが一体化して、希有な舞台芸術に昇華する。
文楽の劇場は、舞台と観衆を巻き込んで一つの小宇宙となる。